第3回連載 「アメリカ株異常な暴騰の真相」2/6
そのアメリカ株市場は業績と無縁のバブル相場
この一握りの銘柄への人気集中傾向は、S&P500という大型株中心の株価指数だけではなく、アメリカの株式市場に上場している企業全体についても言えることだ。次のグラフは、ニューヨーク証券取引所、ナスダック市場、アメックス証券取引所の3大市場に上場している全銘柄を網羅したウィルシャー5000という株価指数の中で、わずか10銘柄の値動きとその他全銘柄の値動きを比較したものだ。
上記3大市場の銘柄を全部合わせると約5000銘柄だった1974年ごろに開発された指数なのでウィルシャー5000と名付けられたのだが、その後1998年には7500銘柄を超えた。現在は合併買収や上場銘柄の非上場化が多く、また経営破綻などで上場廃止になる銘柄も増えているので約3400銘柄に絞りこまれている。その中で、FANGMANTISと呼ばれる人気10銘柄だけの指数は、コロナ騒動での下落も小幅にとどめ、2020年2月中旬からのパフォーマンスで50%超の上昇を記録したあと、小反落はあっても約35%の上昇という水準を維持している。
FANGMANTISとは、フェイスブック、アップル、エヌヴィディア(半導体製造)、グーグル、マイクロソフト、アマゾン、ネットフリックス、テスラ、インテル、セールスフォースの10社を指す。この10社のうち、セールスフォースだけは主な業務内容として営業支援を掲げているが、中小企業の業務のデジタル化、eコマースへの進出支援、人材育成のデジタル化などをウリにしていて、やはりハイテク・情報通信・インターネットという分類に包摂される部分の大きな会社だ。
一方、FANGMANTISをのぞく約3400銘柄の平均は、2月下旬以降一度としてプラスに転ずることなく、現在も約10%の下落にとどまっている。ウィルシャー5000には上場直後で株価も業績も急成長のまっただ中という銘柄も多いから、一握りの人気集中銘柄と上場直後の急成長株をのぞけば、アメリカ株の大部分はいかに魅力のない投資対象だったかがわかる。
それでは、逆境の中で株価が上昇しつづけてきた人気10銘柄はすばらしい業績をあげているのかというと、それほどのことはない。とくに、eコマース最大手アマゾンと、インターネットを通じたコンテンツ配信の最大手ネットフリックスは、営業利益率で見ればS&P500採用銘柄の中では最低に近い水準で推移している。何が株価を押し上げているのかと言えば、ほとんど業績とは無縁に「業界最大手であり、追随する競合企業に対して巧みに参入障壁を設けているので、業界内のシェアは上がることはあっても下がることはない」という疑似独占状態の企業であることへの評価が高いのだ。
この疑似独占状態への評価は、アメリカ経済全体の景況のよしあしにはほとんど関係なく高まりつづける。いや、最近では景況が悪くなるほど、さらに高まるといったほうがいい。次の表が端的に示すとおりだ。
2007~09年の国際金融危機を招いたサブプライムローン・バブル崩壊のころには、ハイテク大手4社も、ハイテク・情報通信株の比重が約7割と極度に大きいナスダック100連動型ETF(アメリカの証券コードではQQQ)も、軒並み40~50%台の下落を記録していた。ところが、今回のコロナショック暴落では、ほぼ正反対の数字となっている。上昇率最低のグーグルでも13%上昇、最高のアマゾンにいたっては71%の大暴騰、それ以外は30~50%台の上昇だ。
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