日経平均が4日間続落で直近の高値から約6%の下げ たんなる調整ではなく、本格的な弱気相場の始まり?

こんばんは 

 

本日、324日の日経平均は、寄り付き(取引開始)直後からずるずる下げつづけ、結局安値近辺の28405円、前日比590円安の下げとなりました。これで、先週の金曜日、319日から24日まで4営業日続けて前日比がマイナスという低調な展開となりました。

過去3ヵ月間の日経平均の日足を示す下のグラフをご覧ください。なお、日足とは株式市場が開いている日ごとに、その日の始値、高値、安値、終値(これを4本値と呼びます)をロウソクの上下にひげの付いたかたちで表したデータのことです。

 



 

もちろん、高値は上ひげのてっぺん、安値は下ひげの底です。始値と終値はロウソク本体の上端と下端で示します。始値より終値が安いときにはロウソク全体を暗い色で塗りつぶし、始値より終値が高いときにはロウソク全体を白抜きのままか、明るい色で塗りつぶします。

ご覧のように日経平均は、19日から24日まで4営業日連続で下げつづけ、24日の終値は、直近の高値だった18日の終値、30216円に対して1800円強、約6%の下げでした。

バブル崩壊後の最高値で引けた216日の終値30467円に比べれば、2000円を超える下落となっています。


日経平均とアメリカ大統領選

 去年の夏以降ほぼ23000円前後で横ばいにとどまっていた日経平均は、113日のアメリカ大統領選で民主党のジョー・バイデン候補が当選してから、急上昇が続きました。そして、今年の2月半ばには、ついに約31年ぶりに3万円台を付けたのです。これほど大きな上昇があれば、ときおりスピード調整で下げることもあって当然だという見方もあるでしょう。


ですが、アメリカ大統領選以降の世界的な株価上昇は、果たして実体経済の好調に支えられていたのでしょうか。どうもそうは感じられないのです。去年の春以降、世界各地で新型コロナウイルス、コヴィッド-19の蔓延を防ぐためと称して、厳重な都市封鎖や不要不急の外出禁止が実施され、消費者向けサービス部門は前年比で69割減といった壊滅的な売り上げ不振に悩まされました。


トランプ氏からバイデン氏へ

ちょうど民主党のバイデン候補が当選したころから、新型コロナ対応のワクチンに実用化が始まり、徐々に極端な行動制限は緩和されつつあります。でも、新型コロナ騒動が始まる前から、すでに過大評価されていたアメリカのIT関連巨大企業以外の業績は決して上昇基調ではなかったのです。コロナ禍が完全に消え去ったとしても、景気が画期的に良くなるわけではありません。また、コロナ以前の日常生活への復帰も順調とは言えない、遅々とした歩みにとどまっています。


そのほかに、大統領がトランプからバイデンに変わって、景気が良くなる要因が考えられるでしょうか。可能性としては以下の2点が挙げられます。


1) 中国に敵対姿勢を取っていたトランプと違って、バイデンは中国に対して宥和的なので、世界経済の成長率が高まり、アメリカを中心とする先進諸国もその恩恵にあずかれる。

2)地球温暖化自体を疑問視していたトランプと違って、バイデンは化石燃料のから「再生可能」エネルギー源による発電や電気自動車の普及に積極的なので、これらの分野の技術革新で世界経済の成長性が高まる。


どちらも、経済成長率の加速や景気回復にはほとんど貢献しない、むしろ景気の足をひっぱりそうな変化です。まず、中国に対するスタンスが対決型か、宥和型かから見ていきましょう。


金融業界からの献金がほとんどゼロだったトランプは、本気で中国との貿易戦争を目指していました。一方、金融機関からの大口献金で大統領になれたも同然のバイデンは、国際会議などでのスタンドプレイで中国との対決姿勢を取ることはあっても、本気で対決できるはずはありません。



中国経済とアメリカ経済

アメリカの金融業界の好業績は、中国からほとんど無利子で借りたカネを中国に又貸しして高い金利・配当収入を得ていることで支えられています。アメリカの金融業界がこの上得意客との対決姿勢を許すはずはないからです。ということは、もし中国経済の成長性が高まって、アメリカもそのお裾分けにあずかれるなら、これはアメリカ経済の成長性も高める要因ということになるはずです。


しかし、中国経済の動向を映す鏡というべき、上海深圳CSI300株価指数を見ていると、中国で経済成長率が加速する兆候は見受けられません。むしろ、減速、あるいは失速の懸念のほうが大きいのです。次のグラフは、20193月から直近までのCSI300株価指数の推移です。

 


 

ご覧のとおり、少なくとも公式発表ベースでは新型コロナの蔓延を20203月末までに武漢市周辺に封じ込めることに成功した中国の株式市場は、主要国の中で最初に回復に転じました。そして、113日のアメリカ大統領選でバイデンが勝ってからは、さらに上昇率が加速した感があります。


ところが、そのCSI300株価指数が今年の2月中旬から6週間連続で下げているのです。中国で成長性の高い民間大企業は、事業規模拡大のための資金を海外からの投融資に頼る傾向が顕著ですが、今年に入ってからも海外からの直接投資に対する需要が回復していないことも気がかりです。そして、中国企業が海外からの投融資に対する需要を減少させれば、その投融資からの金利・配当収入を重要な収益源としていたアメリカの金融業界にとっても打撃となります。


アメリカ経済の方向転換

そのアメリカを代表する株価指標であるS&P500株価指数も、3月中旬に入って史上初の4000ドル台乗せにあと一歩まで迫ってから、足踏みから下落へと方向を変えつつあります。次のグラフでご覧いただけるとおりです。

 



 

この方向転換に関する代表的なコメントは、以下のようなものでしょう。


「今までは、欧米諸国で順調にワクチンの大量投与が進んで、日常生活も戻ってくるし、経済活動も急回復するという甘い幻想があった。だが、ワクチン投与自体も期待ほど順調には進まず、通勤や行楽のためのガソリン需要は低迷しつづけている。だから、バイデン当選後一本調子で上がっていた原油価格が下落に転じた。主要国株価の軒並み安は、景気回復期待が楽観的すぎたことに対するしっぺ返しだ。しかし、ペースは緩慢でも景気回復は間違いなく進むのだから、この下げは長期上昇相場の中での調整局面にすぎない」



再生可能エネルギーの危うさ

私は、この見方には重要な見落としがあると思います。

それは、従来あまり本格的な議論もされずにムードで普及が進んできた太陽光発電や風力発電が、いかに非効率で頼りにならないものかが暴露されたという事実です。去年の夏から秋にかけて続出したカリフォルニア州の山火事被害は、安定的な電力源が確保されていれば、類焼による大災害化を防げていたはずなのに、消防ポンプの電圧が低すぎて大火事になってしまったという人災の要素が大きかったのです。また、今年の冬、電力源の太陽光化が進んでいたドイツでは、太陽光パネルが凍結で作動しない地域が多く、太陽光発電はほぼゼロとなりました。


そして、今年の2月、通常は真冬でもあまり寒くならないテキサス州で、北極寒気団の到来によって風力発電用の風車が凍結して回らなくなる事故が相次ぎました。全州で長期停電が続出し、自宅で揺り椅子に座ったまま電力の回復を待ちきれずに凍死した方が出るほど悲惨な事態となったのです。現代文明は長期の停電には耐えられません。日照や風力、風向といった人間にはコントロールできない要因次第で供給量が激変するエネルギー源に発電キャパシティの大半を頼るのは、あまりにも危険な方針です。


つまり、バイデン大統領が打ち出している「グリーンエネルギー」重視の方針は、明らかに経済成長率を高めるより、低める方向へ、そして人類文明を危険にさらす方向への変化なのです。


コロナ禍におけるアメリカ株

たまたま2021324日は、アメリカ株がコロナショックによる大暴落で底値を付けた2020324日からちょうど1年目に当たります。そして、この1年間のS&P500株価指数の上昇率は、なんとアメリカ経済が1930年代大不況から抜け出しつつあった1936年の約80%に次ぐ、約75%というすばらしい数字でした。次のグラフでもおわかりいただけますように、直前に株価が大暴落したとき以外には、これほど大幅な株価上昇が起きた例はありません。

 



 

2020年の実体経済は、コロナ禍に対する過剰反応で大きく落ちこみました。しかし、株価は大底でもたかだか20%程度の小さな調整にとどまり、その後は実体経済の回復は遅いのに、期待だけが先行して株価は上がりすぎています。この反落は決して一時的な調整ではなく、本格的で長期にわたる下落基調のはじまりである可能性が高いでしょう。  

 


 読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想お待ちしてます。

コメント

TOMOO さんの投稿…
増田先生、お世話になります。
過去の記事、改めてとても良い復習になりました。

先生の著書でも詳しく解説があったかと思うのですが、
中国調達・中国運用のアメリカの金融ビジネスモデルが、
中国の不動産市況の衰退で一気に崩壊を迎える時が近いのではないかと感じました。

土地神話の崩壊からの日本バブル崩壊と同じような構図が、
世界で起こっているとすればやはり今年の株価が1990年に酷似するのは必然に思えて来ました。
増田悦佐 さんの投稿…
TOMOO様:コメントありがとうございます。
現在の米中関係は、実際に金利配当収入を得ているアメリカ側が「このカモを逃がしたら、ほかにこんなにおいしいカモはいない」と思っているだけに弱い立場で、「ドル建て債の元利なんか踏み倒していいよ」と言っている中国金融当局に、文句も言えずにいるようです。
同じような利権大国とは言っても、やはり金融市場で確立された慣行は守るアメリカが、それさえも無視する中国に手を焼いているのでしょう。
やっぱり、一緒に没落していくしかなさそうな気がします。