ペーパーゴールドやペーパーシルバーが消滅する? ご質問にお答えします その11
こんばんは
今日もまたすばらしいご質問をいただきましたので、そのご質問への答えを書かせていただきます。
ご質問1:バーゼル3が今日発効との話が出ていますが本当なんでしょうか? ペーパーゴールドとペーパーシルバーが一掃されるとか? 自分達に甘い欧米金融機関が、そんなことをするのかな? と思います。ほんとうに金取引市場に劇的な変化が起きるのでしょうか?
お答え:たしかに、今日つまり2021年6月28日は、ヨーロッパ大陸諸国で国際決済銀行(BIS)が銀行の健全性確保のために提案した『バーゼル III』にもとづく貴金属市場の安全性確保策が実施されることになっています。
ただ、この提言は内容があまりにもきびしいもので、たとえば金ETFとか、銀ETFとかが広範に流通している諸国、あるいは金融業界の安定性を確保するための施策が不十分な国には一定の時間的余裕を与えるとされています。
具体的には、ヨーロッパ大陸諸国の施行期限が今日であるのに対して、ロンドン貴金属市場協会(London Bullion Market Association、略称LBMA)という「問題児」を抱えるイギリスでの施行期限は来年、そしてアメリカをふくむ全世界で実施されるのは2023年からとなっています。
金取引には「制度的な不正」がつきまとっています
それでも、おそらく今日からもう(たしか10行だったと思いますが)LBMAのメンバーとなっているヨーロッパ大陸の銀行は、この世界最大の金地金取引市場での金取引ができなくなっているはずです。
なぜかといいますと、『バーゼル III』には「金融機関は自行が保有している金と、自行が他社から預かっている金の合計量以上の金を貸し出してはならない」という条項が入っているからです。
逆に言えば、今までLBMAのメンバー金融機関は、他社から預かっている金を何度も何度もまた貸しして、実際に存在する以上の金が存在するかのような幻想をふり撒いて、金価格をかなり大幅に抑制してきたという事実があるわけです。
経済学の基本は「モノの量が多ければ多いほど値段は安くなるし、少なければ少ないほど安くなる」ということです。
そして、もしまた貸しにまた貸しを重ねて、現実に存在するよりはるかに大量の金が世の中に出回っているという印象をつくり出すことができれば、各国政府・中央銀行は金価格を不当に低い水準に抑えることができるわけです。
たとえば金地金ETFとして世界最大規模のGLDや同じく銀地金ETFとして世界最大のSLVは、表面的には、一般庶民が地金を自分で持つわずらわしさから解放されて、広く貴金属取引を普及させるための道具として開発されたと言われています。
ところが、「どうも架空取引をしていて、公表しているほどの金銀地金を蓄積していないのではないか」という疑惑につきまとわれています。
このへんについては、拙著『やはり金だ!』をぜひお読みください。
ここでまた、なぜ世界各国の政府・中央銀行は金の価格を不当に低く抑えたいのかという疑問が出てくるでしょう。
かんたんな答えは、歴史的に見て金の価値の安定性にはほとんど疑問の余地はない反面、各国政府の発行する紙幣や硬貨の価値は大きく変動することがわかっていることです。
ですから、金価格が上がると、各国通貨の価値が下がっていることがバレてしまい、国民に対して貨幣価値を安定させる使命を負っているはずの政府や中央銀行には都合が悪いからです。
そして、表面上自国通貨の価値を高く保つことに役立つのであれば、各国政府・中央銀行・金融監視機関は、そうとう派手な不正も見て見ぬふりをしています。
たとえば、ロンドン貴金属市場協会で取引されている金地金について、どれほど多くの基本情報が開示されていないかのリストをご覧ください。
金地金市場での取引は闇の中
第3項目の「分別管理分・一括管理分の内訳」とはどういうことでしょうか。
LBMAで取引され、イングランド銀行の金貯蔵庫に保管されていることになっている金地金には「これはだれが所有している金で、どのような金融機関に委託されて、イングランド銀行が預かっているか」がはっきりわかっている分別管理分と、品位と重量と取引日次が記録されるだけで、だれの所有している分かを区別せずにまとめて保管されている一括管理分があります。
そして、分別管理分はごく少数であることだけはわかっています。
「自分が預けてある金を引き出すときには、金塊の刻印まで自分が預けたときそのままのモノを確実に取り戻したい」と思っている偏屈な人が分別管理を強硬に要求したときぐらいしか、分別管理に回される金はない……と言われているようです。
でも、実際のところはどうでしょうか?
もし、自宅などで保管するのは安全面で不安があるから、いかにも信頼のおけそうな中央銀行の金貯蔵庫に保管してもらいたいと思っている人の大部分が分別管理を要求したら、どうなるでしょうか?
金融機関は、気軽にまた貸しにまた貸しを重ねて取引量を膨らませたり、取引手数料や貸出金利収入を何重にも取り立てたりすることができなくなります。
さらに、自国通貨の安定性の幻想をふり撒くこともできなくなります。
つまり、金融業界全体にとっても、何度でもまた貸しができる一括管理に依頼人を誘導したほうが得なわけです。
ここから、我々一般国民にとって非常に重要な教訓を引き出すことができます。
分別管理にゆだねる金地金には「取引相手リスク」はないけれども、一括管理のまま放置している金は取引相手リスクの塊だということです。
それにしても怖いのは、第6項目の後半部分です。
実際にイングランド銀行によって保管されている金地金の量が、取引されているはずの総量の何%になるかどころか、どんなに小さなパーセンテージとは言え本当に保管されている分があるのかどうかさえ、公式情報として開示されていないのです。
日本時間で28日午後11時までの時点では、BISが土壇場で『バーゼル III』の施行を延期したという話は伝わっていません。
こうした貴金属現物取引の実態が、今後2~3年のうちに白日のもとにさらされるはずです。
そうなったとき、実際に流通市場に出回っている貴金属の量は従来想定されていた量の何分の1かでしかないことも判明し、中長期的には金銀価格の上昇材料となるでしょう。
ただ、目先は大口売買をしていた金融機関が抜けて出来高が激減するはずです。
そうすると、あらゆる分野で金融バブルが膨張している現在のような局面では、「こんなに流動性の低いところに資金を注ぎこむのは損だ」という懸念が生じて、短期的には貴金属価格の下落要因になることも考えられることにご注意ください。
ご質問2:アメリカのリバースレポが1兆ドルに届く勢いです。ある日突然……なんでしょうか?
お答え:これは本当に謎です。
もしこれがリバースレポではなく、レポの出来高が爆発的に伸びているなら、連邦準備制度(Fed)と直接取引のできる金融機関が1晩だけ米国債などを預けて米ドルを借りて、翌朝には返すという取引をしていることになります。
実際には手元現預金がひっ迫しているのに、表面的には潤沢な流動性を確保しているふりをしたい金融機関が各四半期の末日1日だけレポで現金を確保して、その日の手元流動性だけ高めた財務諸表を提出してピンチをやり過ごすわけです。
これは立派な粉飾決算ですが、政府や中央銀行の協力を得てやる粉飾決算は、罪に問われることがありません。
ただ、1晩だけ手元現金を減らしては、翌日またその現金を引き取るという操作を決算の締め日だけではなく、何日もくり返すうちにだんだん総額が増えているという事態は、私も今まで見たことがありませんでした。
私の乏しい想像力で点々部分を補うと、アメリカの大手金融機関は米ドルが米国時間のオフィスアワー以外の時間帯で突然大暴落する危機が迫っていることを知っていて、そのときの損失をFedに吸収してもらいたいと思っている、ぐらいしか考えつきません。
もう少し、考えさせていただきたいと思います。
これは、いかなる金融商品に対する推奨や勧誘でもありません。純粋に読みものとしてお楽しみください。
読んで頂きありがとうございました🐱
ご意見、ご感想お待ちしてます。
コメント
時間と場所を取り巻く[自然の変化]に、いかに
初めと終わりの循環的宇宙にながされましょう。
身空ひばり~のごとく。
早速のコメントありがとうございます。終わりある世界を受けいれつつ、少しでもよい時の流れに身を任せたいです。
また、今の世界の終わりは、新たな世界の始まりでもあると思います。
いったいなぜこの時代に施行されるのでしょう。
世界経済に激震が走るでしょうね。
ニクソンショックが彷彿されます。
中原圭介という方はブログでずいぶん以前から警鐘を鳴らしていましたので
知識としてはありました。
世界が良い方向に進むのでしょうか。
素晴らしいご質問をありがとうございます。
今週の土曜日のブログでお答えしたいと思います!
日本は、こういう点が、戦後は分かつていたのは、民輔とはそれを支持した株主たち。残念ながら、美空ひばりの挽歌[川の流れのように]なってしまいましたが?今のジパングは、存在すれど、[流れ]の変化に対応できず。残念無念です。
栴檀の葉
コメントありがとうございます。『やはり金だ』をお読みいただき、嬉しいです。
このブログを通じてもっとたくさんのことを発信していきたいと思います。
ご質問などもお気軽にお寄せください。
増田悦佐
コメントありがとうございます。
私も、投資と考えずに少しずつ金を蓄積していくことが、いちばん堅実な資産防衛策だと思います。
伊丹へのご移転、つつがなく進むことを確信しております。
コメントありがとうございます。
松藤民輔氏が目指した方向は、間違っていなかったと今も信じていますが、時の流れは怖いものとなることもありますね。