中国の不動産企業が債務不履行

こんばんは 
中国の中堅不動産企業、四川藍光開発が7月11日(日曜日)に償還期限のきた元建て社債の元本返済ができなかったことが判明しました。

元本総額は9億人民元(米ドル換算で約1億3900万ドル、日本円で約153億円)ですが、今後1~2年のうちに続々と償還期限の来る国内元建て債、海外で起債した米ドル建て債についても、償還のメドは立っていないようで、債権者団と債務減免のための交渉に入ることとなるでしょう。

この債務不履行に先立ってやはり元本償還ができなかった不動産開発業者、華夏幸福集団の場合、当初の債務不履行額は53億元でしたが、その後の精査で債務超過総額はその12.6倍に当たる670億元となっていたことが判明しました。

中国の不動産開発業者の公表収益は、
売上からして信用できない

中国の上場企業の開示する財務諸表は、まっとうな監査をしている国では信じられないほどずさんなものです。

たとえば、今回債務不履行に至った四川藍光開発の場合、成約ベースでは国内38位の売上を稼いでいるということになっていました

ところが、この成約ベースの売上というのは、あとからペナルティもなしに解約できるものまで含めた数字で、実際に会社に入って来る売上高とはかなり大幅な差があります。

そして、世界的に定評のある格付け機関S&P Global Ratings の調査によれば、四川藍光開発の「売上高」のうち、実際に収益に立つかどうかに疑問の残る金額の比率は過去3年間で大幅に上昇していました。

2018年度には50%台後半だったものが、2019年度には約90%、2020年度にはついに約110%にまで膨れ上がっていたのです。


もし、実際に売り上げに立つかどうか疑問のある成約額が全部パーになったら、この会社には1銭も売上が立たないどころか、売り上げに立つはずだった金額の約10%分持ち出しになってしまっていたかもしれないわけです。

しかも、こうした信頼できない財務諸表を開示していたのは四川藍光開発だけではなく、中国の上場企業のうち、5社はこの会社を上回る比率で回収に疑問の残る売上を立てていました。

1~2位が140%弱、3位が約130%、4~5位が120%強、そのあとの6位が四川藍光開発の約110%というわけです。

さらに、毎年のようにこういう危ない数字を公表している企業なら、それなりに「安定した」経営ができていたという見方もできます。

ですが、四川藍光開発の場合、開示資料では景気のいい数字を並べていても、現場では過去2年のうちに急激に売り上げ不振に陥っていた可能性が高いと思います。

問題はこんなにお粗末な会社も

堂々と米ドル建て債を起債していたこと

こんなに急激に、ほんとうに売り上げに立つかどうかわからない金額まで売上として計上していたのですから、社内の財務事情はまさに火の車だったでしょう。

また、中国内ではこうした実情を察知していた金融市場関係者が増えて起債がやり憎くなっていたようで、四川藍光開発の起債は去年の6月から急速に海外での米ドル建て債に傾斜していきました。

  • まず、2020年6月に額面4億5000万ドル、額面に対する利率11%の2年債を発行しました。

  • さらに、同年12月に額面3億ドル、利率10.4%の3年債を発行しました。

  • そして、今年の1月に償還期限が来年10月なので22カ月債という変則的なドル建て債を、額面3億ドル、利率8.85%で発行しました。

22カ月債という中途半端な期限にも、この会社の切羽詰まった金策ぶりがうかがえます。

それにしても不可解なのは、世界中で金利が低下している風潮に乗って、この3本のドル建て債が、徐々に低金利で、しかもきちんと応募者があつまって落札されていることです。

このへんからも、いかに巨額資金の需要が低迷し、そうとう危ない企業でも高金利を提示すればドル建て大きな資金を調達できていたかがわかります。

とにかく四川藍光開発は、現状で米ドル建て債だけでも今回償還できなかった金額の約7.5倍にあたる10億5000万ドル(約1155億円)を2023年までに償還しなければならないわけです。

当然のことながら、市場はこの償還は無理だと見ていて、2022年償還の8.85%債は元本1ドルに対して29.33セント、同じく2022年償還の11%債は28.83セント、2023年償還の10.4%債は25.33セントという大幅なディスカウントで取引されています。

債券市場は、四川藍光開発が2022~23年まで生き延びる確率は、25~30%と見ていると考えていいでしょう。

ですが、四川藍光開発の株価は今年の年初来でまだ41%しか下がっていません。まだまだこの会社だけではなく、中国不動産業界全体について、株価の下落余地は大きいでしょう。

それ以上に心配なのが、債務総額もはるかに大きい上に元利返済能力に疑問の出ている、恒大集団や中国華融のドル建て債が、債務不履行に陥る可能性が高まっていることです。

読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想お待ちしてます。

コメント

匿名 さんのコメント…
経産省出身議員とは、今金融発言で話題のあの大臣の事ですか?総理を目指してるとか?
匿名 さんのコメント…
ベンツ一台分の賄賂で、棒に振ったとかいう。
増田悦佐 さんの投稿…
コメント有難うございます。もし、内閣の総意で金融機関を使い飲食店いじめをやろうとしていたのだとしたら、その辺りが火種だという可能性はありますね。
匿名 さんのコメント…
この債務不履行が国内だけでなく海外に飛び火するとリーマンショックの再来を思い浮かべます。
中国当局も問題の拡大は避けたいでしょうがもう難しいんでしょうね。
増田悦佐 さんの投稿…
コメントありがとうございます。

中国政府が本気で拡大を避けたいと思っているかどうかについては、やや疑問を感じております。

ハイテク企業に莫大な罰金を科したり、上場計画を妨害した利しているところを見ると、「今まで自分たちを食いものにしてきたアメリカ金融業界を困らせてやれ」と思っているのではないかという気さえします。