厳重な対策を取っている国ほど、コロナ感染が収まらないのは偶然ではない

こんばんは
今日もまた、日付が変わってしまって申し訳ありません。

このサイトにも、私のツィートにもいろいろご感想、ご質問をいただく中で、なぜ旧大英帝国系の国々ではコヴィッド-19対策が厳重であり、しかもなかなか感染が収まらないのか、私なりの答えがまとまってきましたので、この問題をもう一度取り上げたいと思います。

オーストラリア・ニュージーランドで
進む「コロナ専制」はなんのため?

まず、今朝もご質問があったのですが、シンガポールでは「本来無料であるはずの医療行為でもコロナワクチン未接種の人からは料金を取る」と言ったり、オーストラリアでは「ワクチン未接種者だけを対象にロックダウンを実施し、そのための強制収容所を建てる」と言ったりしています。

また、ニュージーランドにいたっては、感染者も犠牲者も人口当たりで非常に少ないのに、マスクを着用せずに外出したり、ワクチンを接種していない人に対して、厳格な罰を課しています。

こうした政策がまったくの過剰反応であることは、次のグラフでも明瞭だと思います。


ご覧のとおり、すさまじいペースで、全国一律であったり、地方や大都市圏限定であったりのロックダウンをくり返してきました。

去年の秋ごろまでは、一見その成果で蔓延しそうになるたびに早めのロックダウンで鎮静化に成功したような状態になっていました。

去年の11月5日に、ワシントン・ポスト紙は「オーストラリア政府は科学を信じて早めの対策を打ったからコロナ鎮圧に成功した」と報道しています。

ですが、振り返ればたんに諸外国との人的交流が少ないので、たまに広がりそうになっても感染者の絶対数が少ないので自然に下火になっていただけだと思います。

そして、ワシントン・ポストは決して早とちりで「鎮圧成功」と書いてしまったのではなく、アメリカでも厳重な対策が必要だと主張するために、この感染者数の少なさを利用したのでしょう。

しかし、今年の初夏ごろ、ワクチン接種も本格化し、コロナウイルスにもどうやらワクチンに対する耐性の強い変異種が出てきたころから、状況は一変します。

それがはっきり表れているのが、今年8月以降のロックダウンをくり返しているにもかかわらず、というよりはロックダウンをくり返すほど感染者数が増えている現状です。

このグラフ1枚見れば、ひんぱんなロックダウン、あるいは広範なワクチン接種、おそらくはこのふたつの相乗効果で、感染者数が増えることは明白だと思います。

東南アジア諸国でいちばん早くワクチン接種率の向上に取り組んだシンガポールでも、ほぼ同一の結果が出ました。


シンガポールでは、ロボットパトロールまで動員してマスクを着けずに道を歩いている人に警告を発しているそうですが、ワクチン接種率の向上とワクチン耐性の強い変異種の蔓延に連れて、感染者数が激増しています。

なお先ほど見ていただいたオーストラリアでの感染者数の推移では、去年の3月と8月に小さなピークがありました。

しかし、重症化の事例や犠牲者数となると、オーストラリアの被害は欧米諸国よりずっと少なかったのです。

今年の10月までのオーストラリアは、ほとんど深刻な被害なしでコロナ騒動を乗り切れそうに見えていました。


人口100万人当たりの犠牲者数で見ると、スウェーデンは去年の4月と今年の1月のピークにはかなりの犠牲者を出しながら、「ロックダウンなし、マスク着用もワクチン接種も義務付けず」という姿勢を貫いて鎮静化に成功したことがわかります。

逆にあれほどロックダウンをひんぱんにおこない、マスク着用やワクチン接種を義務付けしていたオーストラリアは、スウェーデンで犠牲者数が100万人当たり1人未満という状態が定着したころに、上昇に転じています

ワクチン接種率の高さが
感染を広める傾向は明白

どうやら、ワクチン接種率を高めるほどコロナ感染は増えるようです。次のグラフも、その傾向を示唆しています。


実効再生産率とは、1人の感染者が何人に感染を広めるかという数字ですが、占領下にあるパレスチナ人をのぞく国民すべてにワクチン接種を義務付けているイスラエルで約2.3人と突出していて、ヨーロッパ諸国では2回接種済みの人がかなり多いほうのイギリスが約1.4人です。

たとえ当人が望んでもワクチン接種をしてもらえないし、非常に狭く衛生状態も良くない難民キャンプに住むことを強制されているパレスチナ人のあいだで感染率が低いのは、なんとも皮肉な現実です。

あくまでも理論的にはという限定付きですが、この2ヵ国はまだ蔓延に対する厳重な警戒は必要だということになります。ただ、ロックダウンやマスクやワクチンの義務付けが効果的な対策ではなさそうなことも、かなりはっきりしていますが。

スウェーデンは0.5人を割りこんでいますから、これはもう明らかに終息に近づいていると言えるでしょう。

意外なのは、アメリカもまた約0.8人と理論的には下火になって当然の数字なのに、今でもまだ新規感染者数は高水準で推移していることです。

じつは、効果に疑問があるワクチンの大量接種をやらなければ、今年の2月ごろには自然終息に向かう状態になっていたのではないでしょうか

再生産率というやや抽象的な数値を使わなくても、同じような傾向は読み取れます。


政府が大々的にワクチン接種を奨励しているイギリスやアメリカと比べて、ドイツやイタリアはやや控えめな推奨にとどまっています。

ここでも皮肉な事実に出くわします。

一時「格安料金」で製薬会社から提供を受けてワクチン接種を拡大しかけたインドは、その値段でも財政的な負担が大きすぎると、途中から方針を転換しました。

感染はある程度やむなしとして、軽症のうちにイベルメクチンを投与して重症化を防ぐ方針に切り替えたのです。その結果、9月初めにはこの6ヵ国で新規感染者数がいちばん少なくなっていました。

これもまた、ワクチン接種はむしろ感染を広めるのではないかと疑う価値のある事実と言えるでしょう。

柳に風の自然体が強制に勝つ

新型コロナウイルスへの対応は、各人の自主的な判断に任せたほうがいいと思います。

それは、常時臨戦態勢の軍事専制国家イスラエルと、ほとんど何ひとつ強制的な手段を講じることなく、鎮静化に成功したスウェーデンとの比較で一目瞭然と言えるでしょう。

まず、感染者数から見ていきましょう。


イスラエルは、かなり長期にわたって新規感染者数が低水準に落ち着いていたのに、マスク着用義務付けを解除してから10日も経たないうちに、ちょっと症例が増えただけでまた義務付けを復活して、その後感染者数が激増するといった大失態を演じています。

一方、スウェーデンはかなり新規感染が増えたときにもぶれずに一貫して国民の自主的な判断に任せて、ほぼ自然消滅が見通せるところまで漕ぎつけました

犠牲者数で見ると、この対照はもっと鮮明です。


自然体のスウェーデンが人口10万人当たりの犠牲者数を0.2人程度に抑えこんだのに対し、号令一下マスク着用やワクチン接種を強制しているイスラエルでは、今年の9月中旬で10万人当たり3人を超える水準まで激増しています。

こうなるともう、イスラエル政府の関心は国民の命を守ることより、国民を命令どおりに動かすことのほうにあるのではないかと思えてきます。

旧大英帝国諸国の過剰
介入はいったいなぜ?

イスラエルのような万年軍事専制国家が感染症の蔓延をいい機会に国民に対する統制を強めようとするのは、わかりやすいと思います。

でも、アメリカだけではなく、オーストラリアやニュージーランド、そしてシンガポールまでもが、なぜ不毛な過剰介入で新型コロナの被害を拡大しつづけるのでしょうか。

お忘れかもしれませんが、第二次世界大戦が勃発するまでのシンガポールは、大英帝国にとってアジア太平洋地域最大最強の海軍基地でした。

私は、アングロサクソン系諸国では頭脳労働をする知的エリートと一般大衆との経済的・社会的・政治的格差が大きく、しかも危機が起きるたびにこの大きな格差をさらに拡大しようとするバネが働くからではないかと思っています。

じつはアングロサクソン系の国民はほとんど残っていないけれども、彼らの支配原理を華人系のエリートがそっくり受け継いでいるシンガポールの例がわかりやすいと思います。

今や、シンガポールはアジアでもっとも所得水準の高い国の座を香港と争っています。

しかし、主としてオフィスワークをする華人たちと、マレー系、インドネシア系、フィリピン系の人たちのあいだには、所得、資産、文化、教育水準にわたってすさまじい格差が存在します。

国民全体の生活にかかわるほとんどの政策決定は圧倒的多数が華人で構成された政府がおこない、その他の諸民族系の国民は従うだけという状態です。

オーストラリアとニュージーランドの場合は、今までどおりの支配原理を守りたいというより、もっと切実な問題があると思います。

とくにオーストラリアは、世界有数の資源大国で、これまで中国の資源浪費型高成長の恩恵を受けて、かなり高い生活水準を謳歌してきました。

しかし、伝統的な知的エリートにとってしゃくのタネだったことがあります。

それは、頭脳労働者よりも、自営トラック運送業者、貨物列車の機関士、エネルギー・鉱物資源採掘の現場労働者、沖仲士といった職業の人たちのほうが高給を取っている(あるいは頭脳労働者にとってはそう見える)状態が続いたことです。

オーストラリアが世界経済で果たしている役割から見れば、当然のことです。

でも、頭脳労働者のほうがずっと所得も資産も高水準で、社会的地位も高くなければ気が済まない知的エリートにとっては、そういう我慢のできない状態が中国経済の台頭とともに過去10数年続いていたわけです。

仕事の大半はリモートワークで片付く彼らにとって、コロナ騒動はどうしても現場に出なければ仕事にならない現業労働者に身の程を思い知らせてやる絶好の機会に見えたのだと思います。

だからこそ、実害はあれほど低水準にとどまっているのに、オーストラリア連邦政府や各州政府の「コロナ対策」はヒステリックなほど過剰なのでしょう。

頭脳労働者の報酬より酪農家の報酬のほうが高い(と頭脳労働者は思いこんでいる)ニュージーランドも、同じことだろうという気がします。

ちなみにこれは、伝統的な「資本家対労働者」の図式には収まりません。

「あなたは、国民にはワクチン接種済みとワクチン未接種の2種類がいるとお考えですか?」との質問に、嫣然と「当然そうです」と答えたジャシンダ・アーダーン首相はニュージーランド労働党の党首です。

これは、イデオロギーに関わらず「現場の下っ端は上からの命令どおりに動けばいい」と考える既成権力側と、一般大衆とのあいだの対決なのです。

アメリカもまた、知的水準が低いはず
現場労働者の反乱に怯え始めている

アメリカの場合は、もっとひねりが効いています。

頭脳労働をするエリートたちが、人種的、民族的、性的マイノリティを盾に使って一般大衆に向かって「お前たち遅れた大衆は、我々が教えるとおりにあらゆるマイノリティを尊重しなければならない」とお説教することによって、彼らを操縦してきたのです。

その操縦が、ワクチン接種の強要でほころび始めています

ワクチン接種を受けない人は、自分の判断で自分の身を危険にさらすだけではなく、接種済みの人たちの命も危険にさらす」という論理は、どうこねくり回してもつじつまが合いません

「そんなに効果の薄弱なワクチンなら、ますます万が一にも副作用があったら怖いから、自分は射たない」という反論に答えられないからです。

そして、さまざまな職場でワクチン接種の義務付けに反対する人たちが出てきた中で、とくに病院・医療関係者のあいだで強制に反対する人たちが目立ちます

彼らこそ、いちばんコロナウイルスに感染している人たちと接触する機会の多い人たちだからです。


ご覧のとおり、医療関係者は高額所得者から低所得者までほとんどハイリスクの職場にいます

十分な治験期間を経ずに実用化されてしまったワクチンがどんなに怖いかもよく知っている彼らのあいだで、ワクチンの強制接種は免職にされても拒否すると言う人たちが多いのです。


私もこのポスターのご意見に全面的に賛成です。

読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想お待ちしてます。

コメント

YAMADA さんのコメント…
増田さん、いつも貴重なお話ありがとうございます。この未接種者のロックダウンはオーストリアも言い出してます。名前が同じような国なんで考える事も同じなのでしょうか?私はオーストリアには芸術など優れた所があると思っていましたが、どうも違うようですね?経済もドイツなくして存在出来ないのに、まるで”虎の威を借りる狐”のようです。

日本でも6月に独立行政法人経済産業研究所がワクチンを打ちたがらない人の特徴を発表してます。下記のような特徴があると決めつけています!笑
「接種するつもり」の人々に比べて、「まだ決めていない」人々は、女性、低学歴者、低所得者、預貯金額の少ない人々、うつ傾向がある人々、痩せている人々で多く、高齢者、夫婦のみの世帯、高血圧か脂質異常症の人々、最重視する情報源がテレビ(NHK)の人々、他人を信用する人々、新型コロナへの恐怖が強い人々で少なかった、という結果に。

要らんお節介な話です。この独立行政法人は税金で、こんな下らない事をやってるのでしょうか?
私の周りで接種してない人は、自分のことは自分で決める!って人が大半です。同調圧力なんて、”屁”見たいなもんって感じですね。
この世界の分断は、大きな禍根となるのか?新たなる道が見いだせるのか?興味深く眺めています。
匿名 さんのコメント…
YAMADAさんのお話の様に、確かに石が浮くと感じるる場合が多いのは😢です。

国の機関も多数有りますので、玉石混交なのはやもう得ないかとも思いますし、どこの出先機関かにもよるのではないかとも存じます。

国立感染症研究所と新潟大の研究で、デルタ株が急増・急減した経緯の研究があり有意な説明しています。

肝心の、先生のコメントについては、コロナのα株ワクチンを接種すればするほど、デルタ株が蔓延する現実をありありと明かしていただいて有難いです。

個人的には、α株ワクチン接種が進むほどデルタ株?の感染が進むのは、自然の摂理ではと最近考えてしまいます。

ただ、日本人と旧信託統治領の人々が、その摂理からお目こぼしをいただけるとは、神ならぬ身として感謝に堪えません。

栴檀の葉




増田悦佐 さんの投稿…
YAMADA様
コメントありがとうございます。まさか、国名が似ていると発想が似てくるということもないと思いますが。
オーストリアの場合、EU内で唯一人口10万人当たり7日間移動平均新規感染者数が100人を突破してしまい、もっと2回以上接種している人の比率の高いベルギー、オランダ、アイルランドは60~90人以内にとどまっているということで、あわててこうした強硬手段に訴えたようです。
とどまっていると言っても、自国と大して変わらない高水準だし、ワクチン接種を義務付けていないスウェーデンは10人にも満たないのに、そちらは眼に入らないほどの視野狭窄に陥っているようで、お粗末な話です。
中国やイギリスほど顔認証カメラが普及した監視体制を持っているわけでもなく、いったいどうやって励行するのかは、政府部内からも疑問視する声が上がっているそうです。
栴檀の葉様のコメントにもありますが、国や国立大学法人傘下の機関もほんとうに玉石混交で、経済産業省の場合、中小企業保護を名目とした「官公需法」によってあらゆる産業分野で利権の巣窟となっている中小企業庁を始めとしてひどい機関が多いように思います。
増田悦佐 さんの投稿…
栴檀の葉様
お褒めにあずかり、恐縮です。
日本人があまり宗教に頼らずに生きていける人の多い国だという事実は、見過ごされがちですが非常に有利な点だと思います。
鯖田豊之という西洋中世史学者は、日本人で文科系の学者にしてはほんとうに珍しく、欧米人であればまず尊敬して見習うべき先進国の人々という先入観にとらわれないものの見方ができる人でした。
彼の著作に「日本の兵士は、死に際に僧侶や神主に看取ってもらえなくても穏やかに死ねるが、欧米人は戦場での突然死ならともかく、ベッドの上で死ぬときに神父や牧師がいないと泣き喚いたり、取り乱して怒り狂ったりする人が多い」と書いていました。
ほんとうに国や国立大学法人の傘下機関も玉石混交ですね。
まったくの印象論ですが、国立大学系で言えば東大は優等生の模範解答で着想が凡庸、京大は大風呂敷のハッタリ屋、旧帝大系でも地方中核都市の国立大の傘下機関にいい研究をするところが多いような気がします。