「黒字の金曜日」のはずが暗い金曜日になってしまった

こんにちは
前回は、「次回はアメリカで医療費と大学授業料がとめどもなく高騰しつづけていることが国民の心理にどんな影響を与えているかについてお伝えする」との予告で文章を閉じました。

ですが、アメリカの国民的祝日である11月第4木曜日の感謝祭(Thanksgiving Day)休場のあと、午後1時には閉場という変則的な営業日だった26日の相場で、久しぶりにS&P500株価指数が1営業日で100ドルを超す大幅な値下がりとなりました。

毎年、感謝祭の翌日に当たる11月の第4金曜日は、「そうとう経営がきびしい小売店でも黒字になる」との意味でBlack Friday(黒字の金曜日)と呼ばれています。

しかし、今年の金曜日はお祭り気分に水を差す、暗い金曜日になってしまいました

今日はそのことについて書こうと思います。

久しぶりの暴落が強引にコヴィッド‐19の
新しい変異株についての恐怖宣伝に使われた

まず、S&P500株価指数の日足からご覧いただきましょう。


今年11月の米株相場は、S&P500が4回も4700ドルを若干上回る水準で引けているのに、なかなかはっきりとした史上最高値を更新できずに横ばい状況で過ごしたあと、半日開催の26日は大幅な下げとなりました。

前日の終値が4701.46ドルとかろうじて4700ドル台に乗せていたのに対し、106.84ドル安の4594.02ドルと、4600ドル台を割りこんでしまったのです。

私は、株価のチャート分析なるものは「イワシの頭も信心から」の世界だと思っています。それにしても、そろそろ実体経済の低迷をよそに強引に突っ走ってきたブル(強気)相場の終焉が近いパターンを描いていることは、間違いなさそうです。

株を売買する人たちは、上げても下げても何かしら理由をつけずにはいられない世界に住んでいます。そこで今回も「暴落の要因」が、もっともらしく持ち出されました。

それが、「南アフリカで発見されたo(オミクロン)株という新しい変異種はすさまじい伝染力を持っているので、世界中でワクチン接種の奨励や移動制限、ロックダウンなどの蔓延防止措置が強化されて、せっかく回復途上にあった経済が、また低迷に転ずる」というシナリオです。

次のグラフを見ると、いかにも説得力のありそうな議論と感じてしまいます。


最初の大きな変異株ベータはコヴィッド-19感染者数全体の過半数に達するまで約100日かかりました。次の大きな変異株デルタは、ちょうど100日目ごろにシェアが90%を超えました。

それに対して、今回の変異株はわずか20日前後でもうコヴィッド-19感染者全体の90%を占めるに至ったわけです。

一見しただけだと、これはとんでもなく感染力の強い変異種なのではないかと感じてしまいます。

なぜニューとクサイを
飛ばしてオミクロン?

また、この新しい変異種がオミクロン(ギリシャアルファベットの最後で、英語で言えばオーに当たる文字の小文字形、大文字形がオメガ)と名付けられたことも、「大物」感を誘っています。

オメガはギリシャアルファベットで最後の文字なので、オメガには終末のとか究極のといった語感があります

さらにマスメディアSNSでも、「前回の大きな変異種はミューと命名されていたから、本来なら次はニューになるはずなのに、ニューと、その次のクサイを飛ばしてオミクロンとなずけたのはなぜか」をめぐるさまざまな憶測が乱れ飛んでいました。

これに関して世間で流布されている説明には、一応説得力があります。

「ニューは新しいという意味の英語newと発音が同じなので新しい変異種一般と混同される恐れがある。また、クサイは英文ではXiと書くがこれは、中国の習近平永世国家主席の姓と同じ綴りになるので、コヴィッド-19が中国で人為的に開発されたウイルスだという説を肯定する呼び名と誤解される恐れがある」というものです。

もっともらしい説明に見えますが、私はやっぱり命名者が「これは究極の怖い変異種だぞ」という脅しの意図を持ってオミクロンと呼んだと考えています。

上のグラフだけ見ると恐ろしく伝染性の強い変異種に見えます。

ですが、じつは南アフリカではコヴィッド-19全体として、完全に鎮静化した中でのいわゆるコップの中の嵐に過ぎないからです。


このグラフには3つ大きなピークがあります。大ざっぱに言えば、去年の夏の最初のピークがアルファ種、今年の1~2月のピークがベータ種、そして今年の夏のピークがデルタ種のピークでした。

いずれも人口100万人当たりで1日に200人を超える新規感染者が出ていた中でのピークです。

南アフリカは人口6000万人弱の国ですから、ピーク感染者数は1日で約1万2000人から2万人に達していたわけです。

その中で感染者に占めるシェアがベータ株では50%を超えたとか、デルタ株が90%台に乗せたとかいうのは、大変な人数だったわけです。

ところが、今回のオミクロン株の90%というシェアは、グラフの右端の位置でお分かりいただけるように人口100万人当たりでほぼ15人程度、実数にしてたぶん900~1000人の中での90%なのです。

つまり、もうコヴィッド-19の流行自体がかなり下火になっていて、すでに確認されていた変異種全体で100人程度の新規感染しか出なくなっていた中で、800~900人の感染者が出たオミクロン株が約90%のシェアを獲得したわけです。

新規感染者数自体が過去のピーク時の10分の1未満になった中で「シェアがたちまち90%を超えた」という事実だけを切り取って、とんでもなく強い感染力を持つ変異種だと騒ぎ立てるのは、明らかに意図的なものを感じます。

変異種の発生をフル活用した
恐怖宣伝モデルが存在する

つまり、下のような「恐怖宣伝」モデルが存在しているのではないかということです。



この模式図のキモは、どこにあるのでしょう?

世間がコヴィッド-19に対する過剰な警戒心を解いて、ふつうの日常生活に戻りかけたころに新しい変異種が確認されて、またロックダウンとか、マスク着用の義務化とか、ワクチン接種の義務化、あるいはすでに2回接種している人にも追加接種を奨励したり、強制したりといった強圧的な政策が登場することです。

そして、このサイクルがくり返されるごとに政府が国民の日常生活を統制するのは当たり前という既成事実が形成されてしまう。

コヴィッド-19という新型コロナウイルスよりはるかに怖いのは政府の統制強化がNew Normal(新しい正常状態)として定着してしまうことではないでしょうか?

読んで頂きありがとうございました🐱 ご意見、ご感想お待ちしてます。

コメント

匿名 さんのコメント…
予定稿の変更お疲れ様です。

南アフリカを見た場合は、先生のおっしゃる通り下降曲線の中での、変種到来との事でさほど大きな問題として受け止めなくても良さそうです。

ただ、欧州諸国、香港に飛び火したので、それぞれ最高水準の感染数・世界最高の強権隔離のお膝元と、感染拡大に引火するには十分な劇場です。
また、米国についても欧州との往来は密なので、飛び火が予想されますし、下手をすると既に火が付いているのかも知れません。
国内については、一部隔離期間の延長を始めた様ですが、防疫の手筈としては、遅々たる対応です。
 願わくば、エイズ患者に感染したコロナウィルスが変性したとの説も有りますので、国内での感染は、AIの少し前の予想通り東京で300人程度で納まって欲しものです。

S&P500の下げもきついですが、原油価格も大幅な調整が入りましたし、円相場も反発に転じましたので、国内的には小康と願いたいものです。

栴檀の葉
増田悦佐 さんの投稿…
栴檀の葉様:
コメントありがとうございます。
たしかに、発生源とされている南アフリカ以外の欧米諸国、香港では、もう少し被害が拡大するかもしれません。
ですが、α株、β株に比べて感染のペースは速かったけれども致死率は顕著に下がっていたδ株よりさらに感染ペースは速く、さらに致死率は低そうな形勢です。実際、南アの感染者の大多数は自覚症状なしで感染が確認され、そのまま快方に向かっているとの報道もあります。
それなのに、木曜日に命名に足る大きな変異種と認知され、金曜日にはWHOがオミクロン株と命名し、土曜日には渡航制限・検疫体制の強化が発動するなど、「手回しの良さ」に作為的なものを感じます。
欧米諸国でもワクチン強制接種に批判が高まる中、警戒心・恐怖心を煽って、ワクチン接種率を高め、もっと効能の顕著なワクチンを開発するための研究費を増やすといった、製薬資本の思惑どおりに展開しているのではないかと気がかりです。
ただ、作為の有無にかかわらず、ちょっとした病気に感染しても重篤状態になる危険の大きなエイズ患者の方々はほんとうにお気の毒です。
ポジティブな兆候もあります。原油価格暴落を見ていると、化石燃料の全廃などという目標が白昼夢に終わることを世界中の民衆が見抜き始めているような気がします。狼中年、狼老年たちの恐怖キャンペーンの効力が徐々に薄れている気配なのが救いではないでしょうか。
匿名 さんのコメント…
Blackってそういう意味だったのですか。駅ビルのテナントにも貼ってあったので変だなぁと思っていました。オミクロンの命名法と近いものを感じます。
増田悦佐 さんの投稿…
匿名様:
コメントありがとうございます。
はい、そういうことです。
なお、Black Fridayの語源には2説あります。ふだんは値下げをしない商品を大安売りするので、店内が「黒山の人だかり」になるからブラックだという説と、あまり繁盛していない店の中には年間を通じて営業赤字だったものが、このセールで黒字になるからブラックだという説です。
詳しくは10月23日にアップした「アメリカ全世帯の8割が迎えるブルークリスマス」→https://www.blogger.com/u/0/blog/post/edit/2251718740248245565/862049660773540164をご覧ください。
YAMADA さんのコメント…
いつもありがとうございます。岡田先生の今週のブログに”WHOの信頼も地に落ちた”とあります。本当にそう思います。オミクロンについては何もわかっていなのに、危機を煽るとは!これが国際機関とは呆れます。それとスパイク蛋白は最初は早い時期に、体から排出されて無くなるとの話でした。が、最近の調査で2回目の4か月後でも”エクソソーム”として残存しているそうです。これが将来どういった事を引き起こすか?起こさないか?は未知だそうです。しかしワクチンが意味が問われている今、今一度立ち止まって考える事は必要と思うのですが?既に日本でも一億人近くに接種してます。もしも薬害が起こったら、一体どうするんでしょうか?可笑しな世界に成り果ててます。
増田悦佐 さんの投稿…
YAMADA様:
コメントありがとうございます。
まったく岡田教授のおっしゃる通りだし、こういう方がきちんと正論を主張できる日本のアカデミズムの世界は、完全にゲイツ財団のカネの力に屈服したWHOなどに比べるとはるかにマシだと思います。
残存スパイクタンパク質が元凶かどうかはわかりませんが、どうも現在世界中で接種を煽っているワクチンには血管内皮細胞を壊死させるという深刻な副作用があるようでして、健康で働き盛りのスポーツ選手たちが循環器系の障害で重篤な症状に陥ったり、亡くなったりする事例が続出しているのはそのせいではないかとも言われているらしいです。