最新著『生成AIは電気羊の夢を見るか?』が本日アマゾンから先行発売されました
こんにちは
本日、最新の拙著『生成AIは電気羊の夢を見るか』がアマゾンから先行発売となりました。全国の書店には明日から配本される予定です。
そこで今日は、この本でお伝えしたかったとても多くのことのうち、4点に絞って内容の一部をご紹介したいと思います。
1.AIを業務に取り入れた成果はイマイチ
「生成AIは常人には思いつかなかったような画期的な仕事をしてくれる」という期待も大きいようですが、すでに業務に取り入れている企業がどの程度コストを削減できたか、あるいは売上を拡大できたかといった具体的に計測できる効果は、なんともパッとしません。
次のグラフが示しているとおりです。
「売上が拡大できた」と言っている企業は、リスク管理分野以外では過半数になりますが、その大半は5%以下の増収しかできていません。
生成AIは、今までならとうてい不可能と思われていたことをやってくれる魔法の杖ではないのです。
2.時おり幻覚症状を起こすので、重要な判断は任せられない
これは、日本のAI関連文献ではあまり見かけない論点ですが、生成AIは結構ひんぱんに幻覚症状を起こします。AIを使っている人間が「ここでこういうデータがあったらいいな」と思っていると、ありもしないデータをでっち上げたりするのです。
これはもう、AIには知覚も感情もないので、当然のことながら倫理感もなく、使っている人間が「こういう結論に持っていきたいのだな」と察知すると、そちらに後押ししてくれるような都合のいい証拠をねつ造するということのようです。
現在の技術でAIの幻覚症状を根絶することは不可能と考えられていますので、重要な判断をAIに任せるのはとても危険です。たとえば兵器の管理ですとか、医療診断ですとか、資産運用の方針決定といったことは、絶対にAI任せにしてはいけないと思います。
3.オープンAIは全面監視社会化を狙っている
去年11月にチャットGPT-3.5というかなり高性能の生成AIを無料で一般公開したのが、オープンAIというベンチャー企業です。
たしかに生成AIの実用化という面では最先端を走っている会社ですが、同時に瞳認証による個人識別を通じて二重取りを不可能にした上で、世界中の人々にワールドコインという暗号通貨をユニバーサル・ベーシック・インカムとして配布するという野望も持っています。
ユニバーサル・ベーシック・インカムについては、賛否さまざまなご意見の方がいらっしゃると思います。
ですが、その配布を不公平にならないようにするという口実で、世界中で生活している個人の身元を識別するデータをたった1社で掌握しようするのは、明らかに世界の全面監視社会化とその中での自社の地位を独占的なものにすることを狙った方針でしょう。
4.生成AIは芸術の創造性をやせ細らせる危険がある
生命、健康、資産などにかかわる重要な決定は任せられないとすると、生成AIが有効に活用できそうなのは、ゲームや芸術など広い意味での娯楽分野に限られてくると考えられます。
生成AIの発展によって描画アプリ、映像製作アプリ、音楽作成アプリの性能が画期的に向上しました。その結果あまり絵を描く技術は高くない人が「こんな絵を描けたらおもしろいのになあ」といった着想を実現できるチャンスは無限と言えるほど広がっています。
経営学者でもあり、生成AI実用化のために広く啓蒙活動をしているイーサン・モリックは「もし古今東西の偉人がスニーカーを履くとしたら、どんなスニーカーが似合うだろうか」という一連の絵をMidjourneyという描画アプリに描かせています。
結果は次の2枚でご覧のとおり、かなり成功しているものもあり、ちょっと違うんじゃないかなと思うものもあり、さまざまです。
とにかく、これだけ完成度の高い絵に仕上がっているのは、みごとです。エリザベス一世の場合は、当人も背景も古典的な肖像画らしく描かれた前に、ぽつんと現代的なスニーカーが置かれているところが成功していると思います。
それに比べるとエイダ・ラヴレースは、当人とスニーカーは完全に現代的で、背景の世界最初に構想されたコンピューターのほうはビクトリア朝的な怪奇趣味満開で、うまく調和していない感があります。
いずれにせよ、生成AIによる芸術は「だれの作風に似せて」という注文には器用に応じますが、「独創的な作品を」という注文には対応できないでしょう。
オリジナリティのある芸術家が出現しても、そのオリジナリティはあっという間に生成AIによる作風コピーで消費し尽くされて、派生的な亜流芸術だけが氾濫する世の中になってしまう恐れもあります。
その他にも、いろいろな話題を盛りこんでおりますので、ぜひご購読ください。
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