時価総額集中バブルは絶望的戦況での最後の吶喊攻撃
こんにちは
今年もほぼ半分に達した時点での比較ですが、S&P500に採用された500社、503銘柄(アルファベット――グーグル――のように2種類の株が採用されている企業もあります)のうち、S&P500より良いパフォーマンスをしている企業はわずか25%、125社に過ぎないのです。
意外にもハイテクバブルの頃の時価総額トップ3は、ハイテクではマイクロソフト1社が常連になっていて、シスコシステムズがたった一度顔を出しただけ、それ以外は昔ながらの通信回線業者AT&T、オイルメジャーのエクソンモービル、そして家電では飯が食えなくなってなんとか消費者金融会社に化けようと画策していたGEといった顔ぶれでした。
これほど極端に、底値圏にとどまっているうちは見向きもせず、株価が上がりはじめるとその結果を後追いで買い推奨し、下がれば買い推奨を減らすだけなら、いったいわざわざアナリストという「知的専門職」を介在させる意味はどこにあるのかと不思議に思います。
現在アメリカで進行中の時価総額集中バブルは、右側の板チョコの厚みを減らして表面積を増やすことで大きくしたように見せる「大きいことはいいことだ」路線に似ている気がします。こちらはもう約半世紀前のキャッチコピーなので、覚えていらっしゃる方も少ないでしょうが。
しかも、アメリカではCEO以下の年俸も勤労所得になっていて、もともと高かったものがますます高くなっていますから、平均的勤労者の取り分はこの3.5パーセンテージポイントよりずっと大きく下がっていると思います。
ご覧のとおり、連邦政府債務の対GDP比率が上がるにつれて、労働力参加率(グラフでは逆目盛りで上に行くほど低くなる)は下がっています。つまり、働かずに政府の借金に頼って生きていく人が増えたことが悪いというわけです。
中国では、ソーラーパネルやEVといった永遠に資金回収ができそうもない分野で雨後のタケノコの如く続出するベンチャー企業に、国有銀行などがベンチャーキャピタル経由で積極的に投融資をしてきたことも、現在銀行恐慌が起きている一因かもしれません。
前々回、前回とマグニフィセント7の収益の中身がいかに怪しげなものか、いろいろ検討してきました。今回は、なぜこんなにうさん臭い企業群に人気が集中するのか、その病理を探ってみようと思います。
現在、米株市場がバブルのまっただ中にあることは、どなたも否定なさらないと思います。
ただ、今度のバブルの特徴は、時価総額がもともと大きかったか、急拡大しているという以外にはほとんど共通点のない銘柄が混じりこんでいることもあって「〇〇バブル」とか「△△バブル」とか、簡単明瞭なラベルを貼り付けるのがとてもむずかしいバブルになっているような気がします。
そのせいか、ちまたでも「中央銀行バブル」とか「量的緩和バブル」とか「第2次ハイテクバブル」とか「なんでもかんでもバブル」とか「マグニフィセント7バブル」とか議論百出で、なかなか統一見解のようなものが出てきません。
今度のバブルは時価総額集中バブルと呼ぶべし
私は、このバブルは時価総額集中バブルと呼ぶべきだと考えています。
その理由はほんとうに良いパフォーマンスをしているのは米株の中でもほんの一握り、銘柄数で言えば7~10銘柄ぐらいで、その他の銘柄は業績も平凡で株価の動きもインフレ率よりはややいいかなという程度の退屈な範囲にとどまっていて、トップ集団とその他大勢との時価総額格差がどんどん開いていることです。
まず次のグラフをご覧ください。
今年もほぼ半分に達した時点での比較ですが、S&P500に採用された500社、503銘柄(アルファベット――グーグル――のように2種類の株が採用されている企業もあります)のうち、S&P500より良いパフォーマンスをしている企業はわずか25%、125社に過ぎないのです。
つまり、残る375社はS&P500より悪い値動きだったわけです。バブルでは特定のセクターや「テーマ」に買いが集中することが多いので、バブルの最中にはいつもそうかと思うと、決してそんなことはありません。
たとえば、サブプライムローンバブルが膨らみきって崩壊に転じた2006~09年の例で見ると、S&P500より良いパフォーマンスをしている企業の比率は一貫して40~50%台で推移しています。
ハイテク(ドットコム)バブルが膨らみはじめた1998年にはこの比率が28%まで下がりましたが、翌1999年には30%台を回復し、崩壊しだした2000~01年には60%台に上がっています。
今回のバブルの特徴は、本来であれば値動きが鈍重なはずの時価総額の大きな銘柄に買いが集中して、ほんの一握りの大型株以外は蚊帳の外というところにあることでしょう。ですから私は「時価総額集中バブル」と名付けたいのです。
ほんとうに良い値動きをしている銘柄群は、125社どころか10社程度に絞りこむことができます。
そして下段は日本ではオルカンと呼ばれることが多い世界株ETF(ACWI)の時価総額上位銘柄への時価総額集中度ですが、トップ3銘柄が12.68%、トップ5銘柄が16.53%、そしてトップ10銘柄は22.16%と同じように集中しています。
値動きの大ざっぱなパターンを見てもご想像いただけるように、両指数の中のトップ10銘柄はほとんど同一です。
ACWIでは時価総額7~10位あたりに台湾を地盤とする半導体ファウンドリー(設計は他社に任せて製造工程だけを受け持つ半導体メーカー)世界最大手、台湾半導体が入ってくる以外は、ほぼ同一のアメリカ株で固めているからです。
つまりACWIになると分母が約4割大きくなるのでトップ10銘柄の比重が3分の1ほど軽くなるだけで、それ以外まったく変わらないほど、時価総額集中バブルの中身はアメリカ株一色なのです。
時価総額集中バブルは「寄らば大樹の陰」バブル
そして、冒頭のセクターや「テーマ」はどうでもいいという指摘とは矛盾するようですが、アメリカ株で時価総額トップ3銘柄を超長期で調べてみると、今回のバブルでの時価総額トップ3の座は2000~02年に崩壊したハイテクバブルの頃よりずっと色濃く「ハイテク銘柄」に独占されていることに気づきます。
意外にもハイテクバブルの頃の時価総額トップ3は、ハイテクではマイクロソフト1社が常連になっていて、シスコシステムズがたった一度顔を出しただけ、それ以外は昔ながらの通信回線業者AT&T、オイルメジャーのエクソンモービル、そして家電では飯が食えなくなってなんとか消費者金融会社に化けようと画策していたGEといった顔ぶれでした。
こうしてみると、今回のバブルを「第2次ハイテクバブル」と呼んでもよさそうだし、むしろ今度こそ「真正ハイテクバブル」とさえ呼べそうな気がします。ですが、私はその見方には賛成できません。
「ハイテクも使っているけれども、時価総額の小さなニッチプレイヤー」であるうちはだれも注目しないけれども、何らかのきっかけでその会社の時価総額が急拡大すると「ハイテク大手」と呼ばれるようになるのが、この時価総額集中バブルの特徴なのです。
その典型が、2018~20年に時価総額第3位になっていたアマゾンです。今ではもう押しも押されもしないeコマース(ネット通販)の最大手となっていますが、アメリカ・オン・ラインが業界首位だった頃には、書籍中心の地味な中堅業者でした。
もちろんeコマース業者にはカタログをネットに載せておけばいいだけで、消費者に郵送するコストが省けるという利点がありますが、さすがにその程度でハイテクとはだれも認めてくれないでしょう。世界中どこでもeコマースは薄利多売の業態です。
アマゾンがこだわったのは、自国ばかりでなく世界中のなるべく多くの国々で消費者に届けるまでのラスト1マイルの配送ネットワークの掌握で、そのために単純ですが膨大な計算の処理用コンピューターと周辺機器への投資を続けてきたのです。
そして、配送網構築が一段落してからは遊ばせておくのはもったいないコンピューター機能の賃貸、つまりクラウド事業に進出し、それまで薄利多売で営業利益が出るか出ないかにとどまっていた収益性が画期的に改善しました。
こうしてアマゾンは、ハイテク大手になり上がったわけです。
競合各社の損益を見るとどう考えてもクラウド事業が好収益とは思えないので、これはラスト1マイルに関する情報を国防総省やCIAにかなり高額で売っているから出ている利益ではないかという点は前回の投稿で指摘させていただきました。
「勝ち馬に乗れ」「勝てば官軍」「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」といった他者依存的な発想のオンパレードで、とにかくみんなが買っていて、時価総額が拡大している株は理屈抜きで買いなのです。
かつてアメリカ人が誇りとしていた独立不羈の精神はいったいどこに置き忘れてしまったのかと思います。
十年一日の如く抱き合わせ販売をしたオフィス用アプリの愚にもつかない微調整で更新料を取っているだけのマイクロソフトや、スマートフォンのカメラを一眼から三眼に変えて以来、新製品はおろか、既存製品でも画期的な新型機種を出したことがないアップルにしても、現状はとうてい「ハイテク」とは呼べないでしょう。
現在マグニフィセント7と呼ばれている7銘柄のうち、いちばんハイテク銘柄と呼ぶにふさわしいのは、グラフィクス・プロセシング・ユニット(GPU)の設計と高機能GPUを中心とするタスク処理インフラを構築しているエヌヴィディアでしょう。
そして同社もまた、小さなニッチプレイヤーにとどまっていた頃はハイテク銘柄ともてはやされることはなく、株価が急騰しはじめるととたんに買い推奨をするアナリストが増えた会社です。
これほど極端に、底値圏にとどまっているうちは見向きもせず、株価が上がりはじめるとその結果を後追いで買い推奨し、下がれば買い推奨を減らすだけなら、いったいわざわざアナリストという「知的専門職」を介在させる意味はどこにあるのかと不思議に思います。
寄せて、上げて、大きく見せろ
もう30年以上も前の話ですが、ワコールの「グッドアップ・ブラ」という商品の「寄せて、上げて」というキャッチコピーが流行語になって物議をかもしました。
何かこう、背中のぜい肉まで強引に前に持ってきて胸の谷間を深く見せようとする、かなり扇情的な宣伝だったというおぼろげな記憶がありましたが、当時の広告写真を見直すと、現代の感覚ではむしろ清楚にさえ見える、下着の広告としては上品なものでした。
現在アメリカで進行中の時価総額集中バブルは、右側の板チョコの厚みを減らして表面積を増やすことで大きくしたように見せる「大きいことはいいことだ」路線に似ている気がします。こちらはもう約半世紀前のキャッチコピーなので、覚えていらっしゃる方も少ないでしょうが。
どこが似ているかというと、実体経済は低成長でインフレ率は高止まり、おまけに金利高騰で庶民の利払い負担が急激に重くなっているのに、一握りの時価総額の大きな銘柄に買いを集中させることで景気が良くなっているように見せかける手口です。
森永エールチョコレートが発売されたのも、順風満帆の高度経済成長を続けてきた日本が、第1次オイルショックや、米ドルの金兌換停止や、米中国交回復に振り回されて、戦後初めての難局に直面していた頃でした。
時価総額集中はベストでもゼロサムゲーム、時価総額の大きな銘柄が資金を大量に吸収してしまうことで中小零細企業の資金繰りがますます苦しくなったら、マイナスサムゲームです。そして実際にそうなりつつあることが、さまざまな経済指標に表れています。
まず、次の2段組グラフをご覧ください。
このグラフでは2013年に始まって2015年にピークを打ったバイオテックバブルと、その後の何層にも重複したバブル群とは切り離した描き方になっていますが、実際には2016~17年に主要な株価指数が大きな押し目をつくった形跡はありません。
その時々で勝馬を乗り換え、乗り換えして2013年以来延々と続いているのが今回の時価総額集中バブルなのです。
下段は20世紀最初の年から現在に至るシラーPER(株価収益率)のグラフです。シラーPERとは直近10年間の平均1株利益をインフレ率で実質化した指標で、名目ベースで水膨れした利益額で測るよりきびしい(高い)PERになります。
このグラフでは、現在のPERは1930年代初頭にあまりにも利益が激減したために上がったときより高く、ハイテクバブルピーク期以外では最高に割高な株式市場になっていることがわかります。
ハイテクバブル期と現在との大きな差は、GDPに占める勤労者の取り分がハイテクバブルの天井で46.6%だったのに対して、直近で43.1%と3.5パーセンテージポイントも下がっていることです。
しかも、アメリカではCEO以下の年俸も勤労所得になっていて、もともと高かったものがますます高くなっていますから、平均的勤労者の取り分はこの3.5パーセンテージポイントよりずっと大きく下がっていると思います。
さらに注目していただきたいのが、勤労者の取り分が42.0%で大底を打ったのが2013年、つまりほとんど永続的とも言える時価総額集中バブルが始まった年だったことです。
もうこれ以上勤労者の取り分を減らすことはできないと見た大手企業経営者たちが、これからは勤労者ではなく上場・未上場を問わず中小零細企業から大手企業へと所得移転をする手段として、かなり計画的に起こしたのが時価総額集中バブルなのではないでしょうか。
なお、この勤労者のGDPシェア下落については、勤労者が失業しても次の仕事を求めず、労働力市場から撤退して生活保護などに頼るようになったから労働力参加率が下がったのであって、自業自得だという説もあり、次のグラフはその論拠となっています。
ご覧のとおり、連邦政府債務の対GDP比率が上がるにつれて、労働力参加率(グラフでは逆目盛りで上に行くほど低くなる)は下がっています。つまり、働かずに政府の借金に頼って生きていく人が増えたことが悪いというわけです。
私もそういう側面があることは認めます。でも、それだけでしょうか。政府の借金は社会保障費だけのために増やしているわけではありません。さまざまな事業への補助金などにも使っています。
その政府債務の生産性がこのところ急激に落ちていることが、次の2段組グラフでわかります。
ひとつ目は、1ドルの政府債務増加でGDPが1ドル増える(つまり元本は回収できるけれども金利は賄えない)状態だった1990年代初めから急速に政府債務の生産性が向上して、ハイテクバブルのピークだった2000年には4ドルに上がっていたことです。
おそらく、2000~02年に崩壊したハイテクバブルは、アメリカ経済にとって株価が急騰する根拠のあった(つまり、実質的な豊かさの増加を伴った)最後のバブルだったのだろうと思います。
たしかにインターネットと、インターネット機能をさまざまな生活の場面で駆使できるスマートフォンの普及は、かなり実質的な豊かさを増やしたという実感があります。
それに比べて、GPUや生成AIがどんな貢献をしてくれるかというと、今のところムダに膨大な電力を食うことが立証されている以外には、あまり確信の持てるデータがありません。
ふたつ目は、2012年に1ドルの債務増加で約20セントしかGDPが増えない、つまり元本の回収すらおぼつかない状態が始まり、この頃資本家が自分たちの取り分を守るために勤労者の取り分を極限まで圧縮したのが、時価総額バブルが始まるきっかけとなったことです。
みっつ目は、2017年からのトランプ政権下でやや持ち直した政府債務の生産性が、2021年のバイデン政権下では60セント未満に定着してしまったことです。
トランプ政権は元々ヨーロッパ諸国での緑の革命派やグローバリストたちの気候変動危機説に懐疑的で、「再生可能」エネルギーや自動車のEV化にも冷淡でした。このスタンスが政府債務を死に金とするようなプロジェクトに使うことを防いできたと言えるでしょう。
でも、バイデン政権下では「再生可能」エネルギーや自動車EV化に巨額の補助金を出したので、回収に何年もかかるどころかまったく回収の見込みのない分野への投下で消えてしまった補助金・助成金が多かったのだろうと思います。
下段は2021年以降の連邦政府による社会保障支出を描いていますが、2020年コロナ騒動での激増からかなり下がったあと、あまり大きく変動していません。
ここからも、労働力参加率の減少は、社会保障費を潤沢にふるまったからではなく、政府補助金によって推進するプロジェクトであまりにも費用効率も悪く、したがって労賃も低い仕事が増えたために労働力参加率が下がりつづけた可能性が高いことがわかります。
アメリカ株の時価総額は全世界株式市場の約75%
恐いのは、こうして虚構で固めたアメリカの株高が、今や全世界の金融業界を牽引していることです。
しかも下段でおわかりいただけるように大型株の多いS&P500株価指数の中でも特に大型の100社を選んだS&P100株価指数の組み入れ銘柄を見ると、PERが50倍超というとんでもなく過大評価された銘柄が26社で、中立の9社、過小評価の11社の合計20社より多くなっています。
全体の80%が過大評価、9%が中立、11%が過小評価という分布です。つまり世界中の金融市場はアメリカの巨大寡占企業が急激に収益を拡大すれば正当化できるけれども、そうでなければ当然大暴落間違いなしの崖っぷちで踊り狂っているわけです。
株価好調の大型株に資金を吸い上げられてしまうため、アメリカの中小型株には赤字経営の企業が多くなっています。
とくに心配なのは、小型成長株という株式市場全体が活気を保つためには非常に重要な銘柄群の28%が赤字経営という事実です。
ベンチャーキャピタルも赤字中小企業激増の一因
ただ、アメリカで小型株の資金繰りが悪いことについては、こうしたわかりやすい理由以外に、ベンチャーキャピタルや未上場株ファンドがそのときどきで話題となっている分野の「有望企業」に対して、計画倒産と言っても過言ではないほど悪辣な出資・投資をしているために増えているという側面もあります。
ホットなテーマに絡んだ会社であれば、どんな製品やサービスを売るのかさえ定かでないような企業に投資をして、なんとか上場に漕ぎつけたら、上場直後のご祝儀相場で吹き値をしたときに売り抜けるほうがじっくり収益成長を待つより資金の回転効率がいいからです。
決して常にそうだったわけではありませんが、さまざまな歴史的経緯から数学でも、自然科学でも、社会関係でも無知蒙昧な状態にとどまるような初中等教育しか受けられなかったのに貪欲さだけは持ち合わせている国民から、なけなしのカネを巻き上げる手段としてベンチャーキャピタルや未上場株ファンドが活躍していることがよくわかります。
しかし、下段を見るとベンチャーキャピタル首位のアメリカで、2021年に大天井を付けて以来、ベンチャーキャピタル出資が激減していることがわかります。
きわめて健全な傾向ですが、何と言っても時価総額1兆ドル以上の大型株が7~8銘柄もある国では、ベンチャーキャピタル市場の縮小程度では、時価総額集中バブルの害毒を打ち消すほどの効果は望めません。
ただし、アメリカが先頭に立ち、中国が必死に対等な立場を築こうとし、ヨーロッパ諸国がこわごわはるか後ろからついて行く中で、ベンチャーキャピタルも未上場株ファンドも日本ではほとんど普及しないのは、すばらしいことです。
次の2段組グラフをご覧ください。上段はアメリカ・中国・ヨーロッパのベンチャー企業時価総額比較です。
中国では、ソーラーパネルやEVといった永遠に資金回収ができそうもない分野で雨後のタケノコの如く続出するベンチャー企業に、国有銀行などがベンチャーキャピタル経由で積極的に投融資をしてきたことも、現在銀行恐慌が起きている一因かもしれません。
下段を見ると、始めから破綻させるつもりでカモを捕まえるためにでっち上げた「ベンチャー」企業が多いことも影響しているのでしょうが、それにしてもアメリカで実際に大きな富を創出している企業が極端に少数にとどまっていることには驚きます。
1929年の大恐慌時から90年間でアメリカが創出した富の半分は全企業のわずか2.03%が担っていて、残り半分を膨大な数の中小零細企業と個人事業者が担っていたというわけです。
私は、この極端な富創出力の集中も、1946年にロビイング規制法という名の贈収賄奨励法が制定された弊害のひとつだと考えています。
アメリカでは有力産業で首位の座を確立した企業は、その後なんの技術革新もせずに政治家に自社に有利な法律や制度をつくらせるだけでのうのうと首位の座を守りつづけることができるからです。
100年弱の株式投資の累計収益率、平均値は2万3000%、中央値はマイナス7%
次の2枚組グラフの左側ほど、米株市場の異常さを浮き彫りにしたグラフはめったにないでしょう。
それにしても、何十年持っていようと株式市場参加者の半分は元手を回収できないのに、勝馬に乗りつづけることのできる人たちの収益率は天文学的に高く、その結果平均値は約230倍になっているとは、恐ろしい社会です。
「それなら大した収益にはならないけど、もう業界首位の座を確立した企業ばかりに分散投資を」という考え方も、当然出てくるでしょう。
ところが業界首位に定着した結果延々と怠惰な経営を続けてきたトップ企業が、突然GEのように実質破綻したり、GMのように国有化されたりすると、そのたびに個人投資家は回復不能なダメージを受けます。
右側に眼を転ずると、ベンチャービジネスでは同じように痛い目に遭っているはずのアメリカと中国が、アメリカは27%割高、中国は36%割安と明暗が分かれています。
中国は少なくとも株式市場に関しては正直なだけマシかと思うと、まだまだ株も経済全体も底なし沼に落ち込んだようにずるずる下げそうです。アメリカが高転びに転ぶことは間違いありませんが、そのタイミングはまだ予測しがたいところです。
ただ、次の2枚組グラフが示すとおり、アメリカが借りても借りても返済すべき元利が膨らむだけの借金地獄に堕ちていることは事実なので、国家破綻は時間の問題だと断言できます。
導火線を伝う火の速さがここにきて急加速していることは確かです。
なお、先進諸国中最大でGDPの2.5倍の国家債務を抱えている日本経済はどうなのかというご質問もあるかと思いますが、その点については次回の「ご質問にお答えします」コーナーで。
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コメント
そろそろ無限にドル札を発行すれば無限にドル安に陥る構造がはっきりしてくる頃だと信じています。