役に立つXアカウント、一挙紹介【金融・経済・不動産篇】
こんにちは
125年間でたった2度しか起きなかったダウ平均月足の上値抵抗線2ヵ月連続突破が、1度目は1929年の大暴落につながり、今また2度目が進行中というのですから、またしてもダウ平均は9割の大暴落を演ずるかもしれないという気にはさせられます。
ほとんど何の被害も出なかったとはいえ、オレシュニクの高性能ぶり(これについては、後篇で信頼すべきXアカウントをご紹介します)が知れ渡るにつれて、ウクライナでもイスラエルでも急激に停戦・講和への機運が盛り上がってきたようですから、タイミングは絶妙でした。
まず、売上と簿外債務とはほとんど何の関係もないはずの2つの数値系列です。ところがエヌヴィディアの場合、このふたつが付かず離れず絶妙に絡み合って似たような成長経路をたどっていて、しかも最近では簿外債務のほうが伸びがいいのです。
1990年代半ば、アメリカ人が1ドル稼いでいた頃に日本人は1ドル89セント稼いでいたというのは、さすがにバブルでしょう。でも直近でアメリカ人が1ドル稼ぐとき、日本人は38セントしか稼いでいないというのは、逆に日本の勤労者の評価が低すぎるでしょう。
ここは下段からご覧ください。1990年代末のアメリカでは生産力年齢の人たちの67%、3分の2強が実際に働いているか、職を探している、つまり労働力に参加している状態でした。ところが、ハイテクバブルが縮小に転じてから、労働力参加率が急落したのです。
この人は本文と印象に残るコンピューターグラフィックスを駆使した絵以外にはほとんどデータを示さないのですが、長期的視点からものを考えているので文章だけでもかなり説得力のある議論が展開できるのだと思います。
お問い合わせもいただいておりますので、今日は私がどんな点に注意してデータを捜しているか、ご紹介していきたいと思います。
最近ではとにかく事態の進行が速いので、ゆっくり構想を練った上で、まとまった論文と言えるような文章がブログに掲載されるのを待っていたのでは、急展開する情勢について行けないことも多いので、Xへの投稿で収集できる情報に絞りました。
それでもけっこうな分量になりますが、関心をお持ちの分野のアカウントはピン止めしてしょっちゅうのぞきに行く価値のあるものを揃えたつもりです。
金融情報の発信者にも広い視野は不可欠
最初にご紹介するのはFinancelotさんです。ハンドルネームでもご想像いただけるでしょうが、フルアドレスになると金融業界のランスロットと名乗っていらっしゃいます。
ランスロットと言えば、伝説のアーサー王を囲む円卓の騎士たちの中でも、王妃グィネヴィアと恋に落ちて主君を裏切ったり、同輩である円卓の騎士のひとりガウェインの3人の弟たちを斬り殺したりと、とくに武闘派の印象があり、Financelotさんもそういう人なんだろうなと思いこんでいました。
たとえば、次の2段組グラフに出てくるような情報は、たしかにセンセーショナルです。
125年間でたった2度しか起きなかったダウ平均月足の上値抵抗線2ヵ月連続突破が、1度目は1929年の大暴落につながり、今また2度目が進行中というのですから、またしてもダウ平均は9割の大暴落を演ずるかもしれないという気にはさせられます。
ただ、ほかの情報源でも同じような指摘はあり、まあしょせんはチャート読みの世界で「当たるも八卦、外れるも八卦かな」程度に見ていたのです。
ところが、実際にはフィナンスロットさんはひたすら金融市場で斬った張ったをくり広げるだけの人ではありませんでした。同じアカウントで次の表を投稿しているのを見て、私の評価はガラッと変わりました。
アメリカという国は金融業界だけ見ていると、万年好況の地上の楽園のように見えますが、それは決して当たり前の経済発展の結果出現した楽園ではなく、戦争利得と切り離せないほど深くかかわっているのだと見極めることが大事です。
そしてもっと意外な人も、アメリカが瀕している全面戦争の危機について真剣に考えていることを最近発見しました。
The Great Martisさんです。もう現役は退いた罫線分析の専門家らしく、いろいろおもしろい線を引いては「今度こそ大暴落がやってくるぞ。みんな怖がれ、怖がれ」と言い続けている、いささか狼老年的な人です。
ところがそのグレート・マーティスさんが、ロシア軍による弾頭抜きの中距離飛翔体オレシュニク発射直前の今月19日に、次のグラフを掲載して「もし核弾頭をつけたミサイルの打ち合いになったら、アメリカは惨憺たる負け方をするぞ」と警鐘を鳴らしていたのです。
ほとんど何の被害も出なかったとはいえ、オレシュニクの高性能ぶり(これについては、後篇で信頼すべきXアカウントをご紹介します)が知れ渡るにつれて、ウクライナでもイスラエルでも急激に停戦・講和への機運が盛り上がってきたようですから、タイミングは絶妙でした。
私自身はチャート分析はほとんど信用していませんが、これほど勘のいい人が引く罫線なら当たる確率も他の罫線屋さんよりは高いのではないでしょうか。
金融業界エスタブリッシュメントに挑む人たち
ス―パーマイクロコンピューターの上場廃止は、直前で半年期限延長となりました。ですが、大量の顧客離れに苦しむ同社は、エヌヴィディア製の最新GPUを搭載したサーバーのたたき売りで資金繰りをしているようです。
当然、エヌヴィディアの業績にも響いてくるはずなのに、今のところ同社の収益成長見通しは下方修正されていません。ただ、この会社がマイクロソフト、メタ、テスラといった大口顧客と循環取引をして架空売上を計上しているのは、ほぼ確実です。
金融業界のエスタブリッシュメントからは徹底的に無視されていますが、エヌヴィディアなどの不正会計を白日のもとに曝そうと追及しつづけている人たちもいます。その中で4つのアカウントをご紹介します。
まず、ゴールドマン・サックスでエリートコースを歩んでいたのに袂を分かってBCA投資顧問の主任グローバル・ストラテジストをしているPeter Berezinさんです。次の2段組グラフをご覧ください。
上段では、S&P500組み入れ銘柄の12か月後の予想1株利益は直近12カ月の実績よりずっといいし、いつまで経っても実績のほうが予想にサヤ寄せして上昇率が高まる気配はない。さらに実績だって、ふつうの企業が採用している手堅い会計基準で見ればほとんど横ばい。
真正面から不正会計とは言わずに「これはどこかおかしいんじゃないですか」とやんわり疑問を投げかけます。
そして、下段ではS&P500の中でもとくに好調なはずの情報・ハイテク部門の1株利益はたしかにかなり上がっているけれども、その割にフリーキャッシュフローは上がっていません。この差は架空計上の利益ではないでしょうかというわけです。
さらに次の2段組グラフで追い討ちをかけます。
みなさん「S&P500もいつまでもマグニフィセント7頼りではなく、もうすぐすそ野が広がります」とおっしゃいますが、その兆候はまったくありませんね。だがらS&P500もそろそろ天井打ちして、4割近い暴落がやってくるんじゃないですかというわけです。
だれでも手に入るデータを使って、まったく論理的に無理なく、しかも直接不正会計を糾弾するでもなく、結論としてはかなり大胆なところまで踏み込んでいます。手堅いデータ分析から大胆な予想を紡ぎ出す、株式アナリストの理想の姿のひとつだと思います。
あとの3人はもっと正面から不正会計問題に取り組んでいます。まずKashyap Sriramさんです。この人が作成するグラフはほんとうに説得力があります。
まず、売上と簿外債務とはほとんど何の関係もないはずの2つの数値系列です。ところがエヌヴィディアの場合、このふたつが付かず離れず絶妙に絡み合って似たような成長経路をたどっていて、しかも最近では簿外債務のほうが伸びがいいのです。
これはもう「今期にこれだけうちの製品を買ったことにしてくれたら、来期以降でこれだけおたくの製品やサービスを買うから」という取引をしているとしか思えないではありませんか。
次は比較的地味にこっそり粉飾決算をしている気配のあるアルファベット(グーグルの親会社)を攻めているPorter Stansberryさんです。
この人はご自分の名前以外にもご自身で設立した会社名であるPorter &Companyというアカウントを使うこともあり、下の4枚組グラフは後者のアカウントに出ています。
「最近1株益が激増したことになっているが、その割に1株当たりフリーキャッシュフローは増えないどころか減っている。もう一方では設備投資が急激に伸びている。これはちっとも増えていない利益を増えたように見せかけて、フリーキャッシュフローが伸びていないのは設備投資を大幅に拡大したせいだ、と見せかけているのではないか」
近年ハイテク大手各社の設備投資で急激に伸びていることになっているのが、生成AIを利用したクラウド事業に使うためのデータセンター建築です。
しかし、AI装備のデータセンターはすさまじい量の電力を消費するため、建築許可を申請してから地元の電力会社が安定的に膨大な電力を供給できる体制を整えるためだけでも3~4年待ち時間が必要です。
すでにデータセンター建設ラッシュが起きているところで新しく建築許可申請をすると、7年待ちになるという話もあるほどです。つまり、実際には着手していない設備投資に大金をかけているふりをするには、こんなに便利な分野はないのです。
この小見出しの最後は、もっと単純なところでハイテク大手不正会計の尻尾をつかんだ感のあるDr_Gingerballsです。
でも、実際にはしっかりプログラム言語を使いこなす人材を持っている企業でははるかに簡単にできることをあいまいで複雑な自然言語で指示を出すため、非常に間違いも多くムダに大量の電力を使うシステムになっています。
ですから、実際問題として生成AIを使おうとするのはプログラム言語をマスターした人材のいない中小零細企業や個人が多いはずです。ところが上のグラフでご覧のように、鉦や太鼓で大宣伝をくり広げているにもかかわらず、PC出荷量は低迷続きです。
とくに生成AIに関する宣伝が盛んになった2022年以降は丸2年前年同期比マイナス続きです。ほんとうに画期的な製品が登場すると、実際に使えるかどうか様子見をする人が増えて一時出荷がへこむことはあります。
しかし、丸2年にわたってマイナス続きでその後の反発も非常に低調とあっては、様子見をした消費者が「実用に堪えない」という結論に達したとしか思えないではありませんか。
標準的な金融情報源5アカウント
とくに明白にブル(強気派)だとか明白にベア(弱気派)だとかの旗印を掲げずに、ちょっとおもしろいなとか、なんだかふしぎだなというデータをひんぱんに提供してくれるアカウントを5つご紹介します。
まず発想にピーター・べレジンさんと似たところがあるJeff Wenigerさんです。
「なぜ日本人の労働の対価はこんなに低くなってしまったのか」こういう素朴な疑問を抱くところから経済全体を覆う問題に対する解答の糸口が見えてくるはずです。ちなみにジェフ・ウェニガーさんも、ピーター・べレジンさん同様今やウォール街では極少数派となっている日本経済ブルです。
2番目はThe Kobeissi Letter、創業社主であるAdam Kobeissiさんの主張も色濃く反映されているのでしょうが、比較的大人数のスタッフがアメリカ中心にまんべんなく金融市場の諸問題を取り上げて新鮮なデータを提供してくれます。
次のグラフは、個人投資家が自分の裁量で株式運用をするのがいかに無謀な試みか、よく示していると思います。
3番目はWin Smart, CFAさんです。下にご紹介するのは2段組の静止画像グラフですが、この人は他のアカウントでつくられた動画グラフの目利きがとても上手だと思います。
もちろん、ここでご覧いただけるように、個人はますますアメリカ株にのめりこんでいるのに、機関投資家はすでに逃げに入っているといった情報も貴重です。
続いて4番目は(((The Daily Shot)))、アドレスからもご想像いただけるように『Sober Look』というウェブサイトがXなどでの短いメッセージ発信用に設定しているアカウントです。
だいたいグラフ1~2枚に短文が付いている程度ですが、内容は上の2段組グラフでもご確認いただけるようにかなり濃密です。
そして、この小見出し最後で5番目のアカウントはBravos Researchです。今年の春ごろまではGame of Tradesというアカウント名だったのですが、どうもGame of Thronesと混同される方があまりにも多くて改名したようです。
この2段組グラフでも、フィナンスロットさんと異口同音に、現在の米株市場が1929年と同様化、ひょっとするともっと深刻な危機に直面していると指摘しています。
不動産・歴史的視点・環境・教育問題
この小見出しでは金融・経済に比べるとやや周縁的に見えるかもしれないけれども重要な諸問題に取り組むアカウントをご紹介します。
まず、アメリカ不動産市場についてです。ここでは、個別案件に関するニュースなら、まずここを捜すというアカウントとしてTriple Net Investorを挙げておきます。次の4枚組写真でおわかりいただけるように全米各都市を網羅して重要な案件の動きを追っています。
また、金融市場の分析について社会的に広い視野と同じくらい重要なのが、歴史的に長い射程を確立することです。この点では、個別の論点ではかなり異論がありますがPeruvian Bullさんが非常に長い射程でものを見ていると思います。
たとえば上のグラフです。日銀による円買い介入については「政府や中央銀行による為替介入は必ず失敗する。だから日銀の円買いで円を高くすることはできない」というのが定説になっています。
たとえば上のグラフです。日銀による円買い介入については「政府や中央銀行による為替介入は必ず失敗する。だから日銀の円買いで円を高くすることはできない」というのが定説になっています。
ところが上のグラフでおわかりいただけるように、日銀にはほんとうに強かった円を執拗な円売り介入で弱くしてしまったという実績があるのです。強い円を弱くできるなら、弱い円も強くできます。こういった歴史的視点は忘れたくないものです。
そして次の2段組グラフも同じように長期にわたる変化を捉えています。
ここは下段からご覧ください。1990年代末のアメリカでは生産力年齢の人たちの67%、3分の2強が実際に働いているか、職を探している、つまり労働力に参加している状態でした。ところが、ハイテクバブルが縮小に転じてから、労働力参加率が急落したのです。
上段に目を転じると、ちょうどこのころから薬物過剰摂取死が急速に増えてきたことがわかります。どちらが先でどちらが追随したのかはわかりませんが、この2つの数値系列に深い相関性があることはほぼ確実です。
そして、そこから先は考える素材を提供された読者が自分なりに納得のいく答えを探し出すべき問題です。
私は基本的にしっかりしたデータの裏付けのないことは文章にしない主義ですが、たった1枚の印象的な絵が、百万言を費やし多くのグラフを描くより印象に残ることを否定する気はありません。
Jim Willie (P) #jimwilliestyleという長いハンドルネームのアカウントが、まさにそれです。
自分のブログ記事などに印象的なサムネイルをどこかから借用したいというときには、ぜひご覧になることをお勧めします。
欧米の公共教育ではとくに理科系が悲惨なほど崩壊しているので、気候温暖化危機論者たちの「人為的二酸化炭素排出が諸悪の根源」といった議論が幅を利かせていますが、そんな中でもきちんと二酸化炭素があるからこその光合成の役割を説明する良心的なアカウントも存在します。Bernieさんのアカウントです。
でも実際問題として、ここに列挙させていただいた数々のアカウントと互角以上に張り合える日本人のアカウントは、これしか見当たらなかったのです。
現在、年金に関連して103万円の壁とか130万円の壁とかが話題になっています。そして、現役の勤労者は被害者で第3号被保険者と呼ばれる専業主婦だった方たちは典型的なフリーライダーとして目の敵にされています。
ですが、目の敵にされている専業主婦たちがそれ以外の生き方をしようとすると、どんなに深刻な障壁が立ちふさがっていたか、真剣に考えた方がいらっしゃるのでしょうか。
たかだか1~2世代前には「寿退社」と言ってたとえ「正規社員」として採用されていても女子社員は結婚を機に退職し、一度退職すると再就職先はパートぐらいしかないという悲惨な境遇に追いこまれていたのです。
現在は、露骨に寿退社や第1子出産退社を強要する企業は減っているようですが、それでも長期の産休を取ると昇進コースでハンデが生じ、2度も産休を取れば事実上昇進はあきらめなければならないといった企業が数多く存在しているのです。
しかも、そうやって正規従業員の枠から排除されていく女性たちは、OECD諸国の中でいちばん理科・工学・技術系の専門職になる適性の豊かな人たちなのです。こんなあからさまな不平等をそっちのけにして、男子正規雇用者を自由に解雇できるようにすればすべては解決すると主張するのは本末転倒です。
まず男子正規雇用がここまで優遇されるなら、既婚・未婚を問わず女子正規雇用も男子と同様に優遇するところから始めるべきでしょう。
読んで頂きありがとうございました🐱
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コメント
買い手が無ければ値無し。
売りてが無ければ無い物高。
商業ビルも使用しないと、建物自体の傷みも増えると思います。
栴檀の葉
原資 料:会社側発表の決算データとありますが、NVIDIAは簿外債務を公表しているのでしょうか?
20数年前にダイエーが「倒産」した時に、隠れ債務が2兆円あるとのウワサが広がっていましたが、その内容・実態は不明でした。
最近ようやく、20年~30年賃借契約の退去時の補償金債務であったことが分かりました。
不動産マーケットの世界に身を置く者として、情報不足・分析力不足と恥じています。